この本は、単なるシステムトレードを紹介するための本ではなく、個人投資家が株式投資を取組むにあたって必要なノウハウ、心構え、テクニックを読み手にわかりやすく一冊にまとめた非常に素晴らしい本である。
筆者自体は、ライブドアショックで大きな損失を被ったことを機会に、投資の達人たちの相場への取組みに対する考え、下げ相場での相場へのエントリーや不安心理の排除のためのテクニカル手法を用いた取組み方など惜しみも無く紹介してくれている。
特に共感したのは、個人投資家が陥り易い、下げ相場における新聞やニュースによる悲観論の高まりで心が揺らいでしまい買いのエントリーを見逃してしまうケースや、悲観の極みで売り物も無くなり相場が反転する可能性があるにも関わらず、足元の経済状況が悪いからと言って先々を見通した買いができない点、さらに相場を予想してしまう悪い癖は、今すぐ改めないといけないと再認識した次第である。
加えて、心理的な不安を排除するためにも、また他人の相場見通しに振らされないためにも自分に適したシステムを用いたトレードを行うことの重要性を痛感した。本書は株式投資に携わる人にとって非常に参考になる良書だと思う。
炎のディーラー、金融機関勤務
金融商品投資歴 26年
個別株による暴落からの反発を狙うシステムトレードといえば、2000年代にシステムトレードの先駆者の一人である斎藤正章氏(「システムトレード発見のポイント」という本が出されています。)が出した本がありますが、今でもこのような手法が通用(細かいところに違いはあるでしょうが)しているというところに、人間心理はいつの世でも変わることがないことが証明されているように思えます。
また、世の中に公開されると(NYダウ逆張り戦略のように)、みなが真似をして通用しなくなるのではないかという懸念があると思いますが、このような手法に関しては、上記のように2000年代から通用している手法ですし、リーマンショック、東日本大震災、コロナショックなどでも通用している手法ですので、大丈夫な可能性が高いと思います。
この本では、システムトレードとは何かというところから、売買ルールの構築、具体的に使える手法など、丁寧にシステムトレードについてのことが書かれています。また、巻末には、使える手法の具体的な銘柄選択の流れが図解入りで無料でできるやり方が載っています(有料の方法もありますが、結構なお値段です。)。
この手法で一番大事なことは、「やり続ける」ことだと思います。暴落がくるとついつい買いたくなくなって投げ売りしたくなってしまいますが、いかにシステムに従うかということが重要だと思います。理論ではわかっていても、いざ暴落になるとなかなか手がでないのが人間の心理です。わかるとできるの間には明確で大きな壁があります。そこで淡々とトレードできる人が、この手法に向いていると思います。
システムトレードに関心がある人や、暴落時にこの手法でやってみたいという人などには特にこの本は良いと思います。
bblue 50代 自営業兼投資家
発想はよくわかるが、私自身がこの方法を主体にトレードすることはないと思います。
ライブドアショックで損失を蒙り、その後、空売りの手法やデイトレードなどをてがけ、システムトレードでの自身のトレード方法の探求をすすめる著者が、暴落時からの反騰をとらえるシステムトレードについて解説した一冊。実直な著者の人柄があらわれているような文章は好感が持てる。
一般に、株を暴落時に買えばその後の利益につながるというのはよく言われることである。ところが暴落時というのはさらに大きく株価が下落するかもしれず、そうした場面で買っていくのはメンタル的にはなかなか厳しく勇気が出ないことが多い。とにかく向こう見ずに買いに走ればいいかというと、実際はなかなかそんなことはできないし、それが適切でもない。
買っていくには、なんらかの根拠なり方法が必要であり、その一つが本書で解説されている短期システムトレードということになる。様々なバックテストなどでも検証をすすめ、具体的な指標をもとにしてトレードをすすめる方法は、相当程度、人の感情を廃した冷静な売買につながる可能性が高くなり、単にその時の気分でドタバタと売買するよりも相対的にずっとよいと思われる。
本書で述べられている方法は著者自身にとって合っていて、好みでもあり、実績も出せている方法ということになろう。
ただ、暴落で買っていくというスタイルには賛成だが、私自身はこのシステムトレードの方法を主体にして実際に売買判断を行うことはないだろう。それは、多分楽しくないから。
暴落時に買っていく根拠は個々の銘柄についての定性的評価、ファンダメンタルズ的理解を深めておくという方法もある。
全体の株価が暴落し、それと一緒に個々の銘柄の株価も大きく下落しても、強い事業内容、ビジネスモデル、参入障壁といったものがすぐに失われたりすることはまずないし、市場規模の拡大が見込まれていた事業が短期間で一気になくなつてしまうようなこともほとんどない。強さを持った企業の株価は一時的に下落することがあってもやがて戻ることが多く、こうした企業の株価が市場全体の下げに合わせて大きく下落した時はまさに絶好の買い場となることが多いものである。
個々の企業についての理解を深め、平時から買い候補としてチェックをしておけば、買いにくいような相場環境の中でも買いを入れることがしやすくなる。売買としては、一発で最高のタイミング、あるいはベターなタイミングをとらえようなどとは最初から考えずに、分割しての買い下がり、売り上がりのスタイルを取ればリスクは下げられる。
私自身は、まどろっこしいが、このような方法、スタンスを好んでおり、それでそれなりの実績に出ている。暴落時の保険的な金融商品としてはオプションを活用したいと思っているが、ここはまだ課題のままだが。
というようなことで、本書は誠実に書かれた有用なシステムトレードの一つの形を示した内容になっているとは思ったが、人よって、合う合わない、好きか嫌いかということが結構大きいのではないかとも感じた。
ふしみん 50代 個人投資家
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