本書では、長期投資におけるバリュー投資の有効さを裏付ける目を見張るようなデータが満載されている。そして、今日、投資家がどのようにバリューの方法論を用いて投資で成功できるかを説明するとともに、ウォール街でカレンが経験した興味深い物語も教えてくれている。
本書で学べることは次のとおり。
●本物のバリュー投資の規律
●カレンが行う銘柄選択の方法の詳細
●成功したバリュー投資の刺激的なケーススタディー
●投資家が注意を払うべき分野
本書はまた過去100年に及ぶ市場の歴史を簡潔に説明している。弱気相場、リセッション、バブル、メルトアップ、金利などを見直すことで、市場がいかに常軌を逸した振る舞いをするかが示されている。本書では、バリュー投資が有効である理由と市場の理解の仕方を学べ、そして投資家として成功するための究極の入門書となっている。
「テンプルトンファンドが行った23年間の研究では、毎年市場の安値で投資をした幸運な投資家と、毎年市場の高値で投資をした不幸な投資家とのリターンの違いはたった1%高いにすぎない。つまり、最良のタイミングと最悪のタイミングで投資をすることの違いはわずか1%なのだ。長期的投資家へのメッセージは明白だ。資金を持っているときこそが投資をする最良のタイミングであり、マーケットタイミングなど忘れてしまうべきだ」(本文より)
第1部 戦い
第1章 100年にわたる市場の歴史
第2部 バリュー戦略
第2章 バリューの規律――PER、PBR、配当利回り
第3章 利益――株価はどうして上昇するのか
第4章 配当
第5章 バリュー投資対グロース投資
第6章 なぜバリュー株はその他の株をアウトパフォームするのか
第7章 リスク調整後のパフォーマンス
第8章 長期的なバリュー――まとめ
第3部 マーケットタイミング
第9章 マーケットタイミング――静かなる殺し屋
第4部 銘柄選択
第10章 調査プロセス
第11章 純資産
第12章 ストーリーがある
第13章 ウォール街に意見を求める
第14章 経営陣
第15章 「ところで」
第16章 インサイダーの買い
第17章 買い手が気をつけるべきこと
第18章 うまくいかないとき
第19章 3点測位
第20章 いつ売るか
第5部 戦略を適用する
第21章 バリュー
第22章 高配当バリュー
第23章 小型株バリュー
第24章 外国市場の高配当バリュー
第25章 途上国市場の高配当バリュー
第26章 オプションの売り――カバードコール
第27章 ESG投資
第6部 市場
第28章 弱気相場とリセッションの歴史
第29章 長期にわたる弱気相場
第30章 メルトアップ市場――長期的にはバリューが勝つ
第31章 バブル
第32章 もうリセッションは来ないのか
第33章 債務――政府、企業、個人
第34章 ウォール街のキルト
第35章 消費者の信頼感
第36章 金利の急騰
さぁ、始めよう――新たな投資家たちへ
最後に
付録 第2章の研究で用いた計算方法
まことに羨ましいことだが、アメリカには市井の人々に対する健全な資産運用サービスが存在し、多くの人がそれを利用して資産形成を行っている。日本の金融業界も、通ったあとにぺんぺん草も生えない焼畑農業式の営業をいつまでも続けるのではなく、そろそろ顧客本位のまっとうなビジネスを少しはしてみたらどうだろうか。
本書はバリュー投資・高配当銘柄投資の入門書であると同時に、アメリカの株式を利用した若年層・中年層向けの長期的な資産形成の平易な指南書でもある。読んでいただければ分かるとおり、やるべきことは極めてシンプルであって、本来は何も難しいことはない。実際、だれにでもできるだろう。それを必要以上に難しくしているのは、投資家であるがゆえの業が生み出す私たち自身のエゴである。
したがって奇妙なことに、投資で成功したければ「可能なかぎり多く儲けたい」という強欲を、まずは捨てる必要がある。本書や『配当成長株投資のすすめ――金融危機後の負の複利を避ける方法』(パンローリング)にあるように、アメリカ株式市場におけるバリュー戦略・成長高配当戦略は、本質的に堅実なパフォーマンスをもたらすことが歴史的に示されており、投資していることを忘れるくらい長期的な視野で静かにそれにベットし、資産形成を目指した人たちは、これまで例外なく果報としての大きな経済的成功を手にしてきた。(続きを読む)
1964年に海軍を退役したとき、ウォール街は活況を呈していた。現在と同じように、当時は狂気じみた投機が支配的で、バリュー投資などまったく流行しなかった。株式市場に関心を持っていたのはまったく新しい世代だったので、1929年の大暴落と1930年代の大恐慌の記憶は歴史の彼方に消え去っていたのだ。
株式熱が高まるにつれ、大手証券会社は全国に支店を開設した。まさにそのとき、私はメリルリンチがウォール街に開設した新しいオフィスで働き始めた。その多くがエネルギーあふれる20代半ばの若者たちで、当時「ミレニアルズ」という言葉はなかったが、われわれがそれに相当した。
われわれのオフィスには日々株式やコモディティーを取引する個人投資家があふれていた。オフィスのティッカーテープが株価を伝えるたびに、彼らは怒鳴り、喝采を挙げた。
1968年、ダウが初めて1000ドルを超えそうになると、市場は突然モメンタムを失った。その後、5年のうちに2回にわたる深刻なリセッション(景気後退)が発生し、株式市場は2回暴落した。土煙がやっと収まった1975年末までに、大手証券会社はオフィスを閉鎖していたが、数多くの証券会社がその後を追い、ブローカーたちは職を失った。数年前までは金融界の中心であったウォール街はゴーストタウンと化した。手軽な楽しみもこれで終わりだった。
この間、2つの出来事があった。1つ目が、ベンジャミン・グレアムが1974年に行ったスピーチで、彼は株式を分析する新しい簡潔な方法があると指摘した。この方法は長期的に投資を行い、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、そして配当利回りの規律を用いることに焦点を当てていた。このグレアムの方法論をわれわれは長期的なバリュー投資と表現できるだろう。
2つ目がバロンズに発表されたポール・ミラーの研究だ。そこには、PERが最も低い銘柄は、PERの最も高い銘柄や株式市場全体を劇的なまでにアウトパフォームすることが示されていた。ミラーの研究はバリュー投資の有効性を実証したのだ。
これら2つの出来事は10年後、私の会社であるシェーファー・カレン創設の礎となるが、現在、この会社では長期的なバリュー戦略を用いておよそ200億ドルを運用している。
2022年 ニューヨーク
ジム・カレン
本書は7つの部に分かれている。
第1部は過去100年にわたる市場の歴史を見ていく。ここでは、長期的には株式市場の変動がいかに激しく、また予測不能かを示そうとしている。
第2部は本書の核を成す部分で、投資戦略そのものを取り上げている。ここでは、長期的に投資を行い、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、配当利回りといったバリューの規律を奉じるべしというベンジャミン・グレアムのアドバイスに焦点を当てている。
第3部はマーケットタイミングだ。市場のタイミングを計ろうとすることはよく長期的なパフォーマンスの静かなる殺し屋と呼ばれるので、これは極めて重要だ。
第4部では、銘柄選択のプロセスに目を向ける。ここでは理論から離れ、銘柄選択という油断ならない問題に取り組む。
第5部では、規律ある戦略をさまざまな投資スタイルにどのように適用できるかを説明する。
第6部は市場の理解に関するものだ。ここでは、ほとんどの投資家が市場で成功しないのは、市場の動きを正しく理解することなく、過剰反応を示す傾向にあるからだというグレアムの意見に従うことになる。
「さぁ、始めよう」と銘打った最後の部では、新たなる投資家たちにいくつかのアドバイスを提供する。新たに投資を始めようとしている読者にとっては最も重要な章になると考えている。
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