『新ファンド・マネジャー』 ジョン・トレイン著／坐古義之 訳 日本経済新聞社 四六判 350ページ 定価1748円＋税 1990年3月出版

今回コメントくださったお客様は 増田 丞美さんです

Ｑ1 オススメ書を教えて下さい。

私が大学を出てファンドマネジャー（職業）として相場の世界に携わるようになったとき初めて読んだ相場に関する本に『ファンド・マネジャー：相場に賭けた９人の男』があります。"９人の男"とは、現在でも有名なウォーレン・バフェット、ポール・キャボット、フィリップ・フィッシャー、ベンジャミン・グレアム、スタンレー・クロール、Ｔ・ロウ・プライス、ジョン・テンプルトン、ラリー・ティッシュ、ロバート・ウィルソンです。その続編として出版されたのが、この『新ファンドマネジャー：相場を動かす８人の男』です。この８人の男とは、ジム・ロジャース、マイケル・スタインハルト、フィリップ・キャレー、ジョージ・ソロス、ジョージ・マイケリス、ジョン・ネフ、ラルフ・ワンガー、ピーター・リンチです。これら８人の中には、旧著『ファンドマネジャー』に登場している地味な投資家と比べ、やや派手な"マーケットの魔術師"タイプのトレーダーが多いのが特徴です。つまり、前出の『ファンドマネジャー』の９人の売買手法が一般の投資家が真似しようと思えばできるのに対して、『新ファンドマネジャー』に出てくる９人の売買手法は一般の投資家には容易に真似できない。本書の著者もいみじくもこのように言っています。「アマチュアがいくら頑張ろうと、その域に達するのはまず不可能である、うっかり勘違いして自分にもできるなどと思い込んでいたら、相当に高くつくのが関の山だ。」 それでも、『新ファンドマネジャー』は一読の価値があります。彼らの手法そのものが、一般の投資家が容易に真似できないものであっても、相場で成功するにはどのような姿勢や考えをもち、そして実践に結びつけたらいいのかを知る手がかりを与えてくれるからです。参考までに、本書において述べられている「長期的投資家」と「容赦ない追跡」派トレーダーの違いを掲げておきます。 「長期的投資家」 相場の長期トレンドについていく 長期持続 少々の下落は無視 株価が行きすぎてもやがて企業収益が追いつくのを待つ 熟知した手持ち銘柄に固執 少数銘柄が集中 自分の性に合った投資方法を貫く 限られた銘柄を深く知る 有効な公式やルールを知る 個別企業を深く知る 企業の経営者と親しくなる 長期複利成長のマジックを知る 買値や売値をあまり気にしない。5年、10年保有すれば問題でなくなる。 「容赦ない追跡派トレーダー」 変化を早めに捉える 絶え間ない回転 悪材料が予想されたら売り 行きすぎたら売り 容赦なく新しい銘柄を比較検討 思いきった分散投資 偏見を捨てなんでも試みる 多数の銘柄を知る 公式類は一切避ける 狙ったテーマに合った銘柄のまとめ買い 経営者のことはあまり気にしない 売買のピッチを上げて他人をだし抜く 取引数が増えていくと馬鹿にならない。

Ｑ2 5点満点で採点すると？

読みやすい ★★★★★ 一般向け ★★★ 専門的 ★★★★ おもしろい ★★★★★ 総合オススメ ★★★★★

増田 丞美さん 1985年に米コロンビア大学大学院を卒業後、野村証券会社、モルガンスタンレー（ロンドン現地法人）を経て、海外ヘッジファンドでデリバティブによる資産運用に携わる。現在、某金融会社にて投資商品事業部および同社米国現地法人AURA,INC.（投資顧問会社、非常勤役員）に従事。著書に『オプション売買入門』、訳書に『カプランのオプション売買戦略』他。講師を務めセミナーや収録ビデオも人気です。

ありがとうございました。