| 携帯版 |
|
|
|
フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/12/02 15:24, 提供元: フィスコ コメリ:地域密着のローコスト経営で成長へ、長期的に3000店舗・売上高1.5兆円が目標*15:24JST コメリ:地域密着のローコスト経営で成長へ、長期的に3000店舗・売上高1.5兆円が目標コメリ<8218>は国内46都道府県に1,200超の店舗を展開するホームセンターチェーンであり、コメリハード&グリーン(H&G)、コメリパワー(POWER)、コメリPROの3フォーマットを「船団方式」で高密度に配置するドミナント戦略を採用している。同社の創業は新潟県三条市。元々農家を営んでおり、祖業は米穀商であった。また、同地の地場産業は金物産地であるため、その地の利を活かし、創業以来、資材・建材、金物・工具、園芸・農業資材分野を核カテゴリーと捉え、これらの分野の流通近代化を目指している。チェーンストア理論に立脚し、標準化されたフォーマットとローコスト経営を武器に多店舗展開を進め、顧客の生活インフラを支える業態として地方圏で圧倒的な店舗網を築いてきた。現在は国内市町村の約45%に出店しており、残る55%への展開余地を中長期的な成長機会と位置付ける。 競争優位性の源泉は、(1)核カテゴリーとしている資材・建材、金物・工具、園芸・農業資材分野の売上が約6割を占める点、(2)完全標準化された3フォーマットによる相対的小商圏への密着展開、(3)自社開発のプライベートブランド(PB)、(4)ローコストオペレーションの融合にある。他社が生活雑貨やインテリアなどを主力とする中、同社は「ハードとグリーン」の領域で独自のポジションを確立。2026年3月期上期までのPB売上構成比は49.7%、目標はPB売上構成比60%を掲げている。また、物流・人員配置・店舗設計まで効率化された仕組みが利益率の源泉となっており、現場作業の生産性改善を徹底している。新関西流通センターは2026年春に稼働予定で、店舗配送やBOPIS需要増加への対応力をさらに高める見込みである。 2026年3月期上期業績は、営業収益201,234百万円(前年同期比1.2%増)、営業利益15,359百万円(同3.7%増)と増収増益を確保した。フォーマット別実績では、パワー業態が同2.4%増、コメリPROは30.5%増と大幅増加し、H&Gはわずかに減少したものの全体として堅調に推移。園芸・農業資材部門では防草シート・防獣用品や米保管庫などが好調で、金物・工具・作業用品分野では電材やファン付き作業服が伸長した。一方、合板など市況下落の影響でリフォーム資材は減少したが、PB商品の販売拡大が収益を下支えした。特にカー用品「CRUZARD」やレジャー用品「Natural Season」などのカテゴリーブランド商品はインフルエンサーによる認知拡大が寄与し、ブランド浸透が進んでいる。 Eコマース事業も好調で、売上高は前年同期比15.3%増。取扱SKU数は約52万点を有し、ネット注文の8割超が店舗受取(BOPIS)を利用するなど、リアルとデジタルの融合が進む。物流費上昇が業界全体の課題となる中、全国1,200店舗を超えるネットワークを活かしたインフラが同社の大きな競争優位となっている。下期は出店計画を加速し、通期計画となる営業収益391,000百万円(前期比3.1%増)、営業利益23,500百万円(4.9%増)達成を目指す方針だ。 市場環境としては、人口減少や競合業態(ドラッグストア・ディスカウント店など)との商圏競合が進む中、ホームセンター業界全体で1店舗当たり人口は減少傾向にある。こうした環境下で、同社は市町村単位での空白地域をマッピングし、地域生活者の困りごと解決インフラとしての出店余地を開拓している。巨艦店舗の不振やEC化率上昇(10%台)により、業態間の垣根が崩れる中、ローコスト構造を維持したままリアル店舗の価値を再定義できる点が強みとなる。 中期経営計画(2026-2028年度)では「3,000店舗・売上高1.5兆円」を長期ビジョンに掲げ、3年間で総額850億円の成長投資を実施する。内訳は新規出店550億円、改装70億円、物流130億円、システム70億円、ESG関連30億円である。重点施策として、ローコストオペレーションの深化、PRO業態と農業分野の拡大、PB比率の更なる向上、EC500億円・リフォーム350億円の実現、人的資本投資(教育プログラム「賢和塾」、マイスター制度の拡充)を挙げている。特にPROは3年間で50店舗の新設を予定し、建築資材・工具の専門性を強化。農業分野ではJAとの協業も拡大しており、農業者・JA・同社の「三方良し」の実現を目指している。リフォーム事業は、商品代と施工費が明瞭にわかるリフォーム工事や、住宅設備交換や害虫駆除などを行う「住急番サービス」を拡充し、顧客目線でサービスを強化している。 財務面では自己資本比率65.9%と健全な財務基盤を維持し、配当は10期連続増配予定の年56円(中間28円・期末28円)を計画している。さらに、最大21億円・60万株の自己株取得を発表するなど、資本効率改善にも意欲を示す。PBRは0.6倍台と依然1倍を下回るが、成長投資の中腹にあるため還元と成長を両輪で進めていく。株主優待では保有株数と保有年数に応じたコメリギフトカードを贈呈し、株主=顧客という認識のもとで個人投資家層との関係強化を図る方針だ。 総じてコメリは、「資材・建材、金物・工具、園芸・農業」に特化したカテゴリー戦略とローコスト経営で他社との差別化を維持しながら、PRO・農業・EC・リフォームで中長期成長を描いている。人口減少・物流コスト上昇といった外部環境に対応しつつ、リアル店舗のネットワークを武器に「地域に最も近い購買体験」を提供できる点が最大の競争優位である。標準化と省人化のバランスを取りつつ3,000店舗構想の実現を目指す同社の今後の動向には注目しておきたい。 《HM》 記事一覧 |