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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/10/09 18:25, 提供元: フィスコ ヨシタケ:配管設計の要となるバルブメーカー、株価年初来高値更新もPBR0.7倍台で推移*18:25JST ヨシタケ:配管設計の要となるバルブメーカー、株価年初来高値更新もPBR0.7倍台で推移ヨシタケ<6488>は、配管ラインにおける流体制御の要として機能する「自動調整弁」の専業メーカーであり、バルブ業界の中でも技術的信頼性と製品寿命の長さで高い評価を得ている。創業以来80年超の歴史を有しており、国内のみならずグローバルでの需要を見据えた供給体制を構築。主力製品は減圧弁や電磁弁、ストレーナー、安全弁、流量計などで、これらは工場設備・建築設備・プラント配管・食品・医薬・空調など、蒸気・水・油といった多様な流体を扱う産業の基盤を支えている。グループは日本・アジアを中心に展開し、製造を担うヨシタケ・ワークス・タイランド(タイ)とカワキ計測工業(兵庫)、販売を担うDoctrine Engineering(マレーシア)やPT. Yoshitake Engineering(インドネシア)などで構成される。品質重視の企業姿勢を貫くと同時に、ここ数年はM&AによるASEAN販路の拡充や新素材開発など、成長に向けた布石を打っており。バルブメーカーから、設計・施工・保守までを含む配管ソリューション企業へと進化を遂げつつある。海外販売比率を高めていく中で、現在は45カ国に販路を持ち、総勢83社に及ぶ正規販売代理店と提携している。 競争優位の源泉は、「品質」と「技術的提案力」の2点にある。減圧弁では国内でシェア2位を確保しており、信頼性の高さが評価されている。バルブは安全に関わる要部品であり、長期的な実績がブランド価値を形成している点は大きい。また、同社は単なる製品提供に留まらず、エンドユーザーに対して最適な配管設計を提案する「ソリューション営業」を展開。省エネや環境負荷低減に資する配管構成やバルブ選定を自社技術者が支援することで、顧客の設備効率を高める仕組みを提供している点が特徴となる。 2026年3月期第1四半期は、売上高2,610百万円(前年同期比18.7%増)、営業利益327百万円(同67.5%増)と大幅な増収増益で着地した。国内では主力の減圧弁・電磁弁が堅調に推移し、工場設備向けでは省エネ・CO2削減効果を訴求するワイズジャケットが好調だった。海外では中国向けやアセアン地域向けの販売が好調に推移したことに加え、特にマレーシア子会社Doctrine Engineeringが大型エンジニアリング案件を獲得したことが利益率向上に寄与した。製造面ではタイ工場の生産最適化や調達効率化が進み、コスト削減が業績を押し上げた。原材料高に対応した自社加工体制の強化も進んでいる。 通期では売上高10,530百万円(前期比7.0%増)、営業利益1,250百万円(同16.9%増)を見込む。第1四半期時点での進捗率は売上・利益ともに高水準で、利益率改善の持続性が焦点となる。7月に実施した製品値上げは2Q以降の利益率に反映される想定。リスク要因としては、金属価格や為替変動が挙げられるが、調達の多様化と内製比率の向上で一定の吸収力を備えている。 市場環境をみると、国内は建設再開発や工場設備更新が堅調に推移しており、設備投資意欲は底堅い。一方、労務費や資材高の影響で施工コストは上昇しており、コスト転嫁力のあるメーカーか否かが収益格差を生む局面にある。海外では米国の関税政策や中国経済の減速が懸念されるものの、ASEANでは堅調な民間投資が続き、現地販売網を持つ同社には追い風が吹く。特にASEAN市場では配管設計と施工を一体化できるエンジニアリング型のバルブメーカーが少なく、ヨシタケが早期に築いた販売ネットワークが優位性を発揮している。 中期経営方針では「販売シェアの拡大」「製品開発の強化」「リスク管理の徹底」「サステナビリティ経営の推進」を4本柱に掲げている。販売面では、建築・工場・流通の3領域での営業体制を強化し、国内の受注率向上と海外販路の拡大を図る。製品開発では、新市場向け製品の早期投入と開発期間短縮を目指すほか、環境配慮型製品の拡充にも注力する。リスク対応では、タイに依存しない多拠点生産を視野に、内製化およびグローバルサプライヤーネットワークの確立を進める。さらに、ネットキャッシュを活用したM&Aも視野に入れており、バルブ技術と親和性の高いエンジニアリング・設備関連分野でのシナジー追求を進めている。 株主還元については、配当性向30%以上を目標に掲げ、2026年3月期の年間配当金は28円を予定する。PBR0.7倍台で推移する中、今後の資本政策には注目しておきたい。総じて、国内市場で築いた品質信頼を基盤に、ASEANを成長軸とする第二の成長フェーズに入っている。主力の減圧弁・電磁弁に加え、省エネ・環境配慮型製品を武器に、エンジニアリング提案力を組み合わせ、生産最適化と販売網拡充による収益体質の強化が進んでいる。出来高が乏しい点は懸念点であるが、まずはPBR1倍割れ改善に向けての株価推移に注目しておきたい。 《FA》 記事一覧 |