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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/01/29 12:05, 提供元: フィスコ クラボウ Research Memo(5):中計「Progress’24」で注力事業に集中し次期成長の基盤構築*12:05JST クラボウ Research Memo(5):中計「Progress’24」で注力事業に集中し次期成長の基盤構築■中期経営計画「Progress’24」の進捗 1. 中期経営計画「Progress’24」の位置付けと基本戦略 クラボウ<3106>は、2019年に公表した「長期ビジョン2030」(2020年3月期〜2031年3月期)に基づき、「イノベーションと高収益を生み出す強い企業グループ」を目指しており、「成長市場における注力事業への経営資源の集中と基盤事業の収益力の強化」による「事業ポートフォリオの変革」を進めている。現在の中期経営計画「Progress’24」(2023年3月期〜2025年3月期)は、その第2ステージに位置し、1) 成長・注力事業の業容拡大と基盤事業の収益力の強化、2) R&D活動の強化による新規事業創出と早期収益化、3) SDGs達成への貢献、4) 多様な人材の活躍推進を重点施策とし、次のステージに向けた土台づくりに取り組んでいる。 2. 数値計画 最終年度(2025年3月期)の業績目標として、売上高1,600億円、営業利益96億円、ROE7.0%などを目指してきた※。とりわけ、前述した重点施策1) を通じた収益力の強化に力点を置いており、売上高営業利益率は基準年度(2022年3月期)の5.7%から6.0%へ、ROEは5.9%から7.0%へと、それぞれ向上させる計画である。また、3年間の投資計画は182億円、R&D予算は62億円を見込んでいる。 ※ 既述のとおり、2025年3月期の修正予想(8月7日公表)によれば、売上高が工作機械事業の譲渡による影響で未達となる一方、営業利益(及び売上高営業利益率)は目標を達成する見通しとなっている。 3. これまでの進捗 第1ステージの前中期経営計画「Creation’21」(2020年3月期〜2022年3月期)については、想定外の新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により、計画していた基盤事業(繊維、軟質ウレタン、住宅用建材等)の回復に遅れが生じ、数値計画を下回る結果となったが、第2ステージ「Progress’24」に入ってからは総じて計画どおりに進捗している。特に成長市場として注力している半導体製造関連分野向け高機能樹脂製品や検査装置等の伸びが、繊維事業の回復の遅れをカバーするとともに、収益力の底上げに寄与しているところは注目すべき点と言える。ROEは株式市場の高騰に伴うその他有価証券評価差額金(純資産)の増加によりマイナスの影響を受けているものの、売上高営業利益率は目標を上回る水準で推移している。また、半導体製造関連分野のさらなる成長を見据え、高機能樹脂製品やウエハー洗浄装置の能力増強などに向けた投資にも取り組んでいる。さらに重点施策2) で掲げた新規事業の創出についても、ロボットセンシング※やIn-Situ計測技術の開発などが実用化に向け進展した。主な事業における取り組みと進捗状況については以下のとおりである。 ※ 2023年10月にロボット用高速3Dビジョンセンサー「クラセンス」のセンサーヘッド分離型の新機種を上市。機能開発を進めるとともに、新規用途開拓にも注力している。 (1) 繊維事業 a) 独自技術を活用した高機能素材やサステナブル素材の販売拡大、b) サプライチェーン全体を意識したQR対応と生産性向上に取り組んでいる。a) については、高機能コットン素材「ネイテック」は秋冬用インナー素材を中心に順調に拡大したほか、ユニフォーム分野では防炎・難燃素材「ブレバノ」「プロバン」の受注が好調であった。また、暑熱リスク管理・体調管理システム「スマートフィット」も急成長しており、自社評価は「〇」としている。一方、b) については、生産計画管理のデジタル化などのスマートファクトリー化によりQRや生産性向上に取り組むも、受注量の回復が遅れた影響で、効果の検証には至らず、自社評価は「△」としている。 (2) 化成品事業 a) 半導体やエネルギー関連市場における注力事業への経営資源集中、b) 軟質ウレタンや住宅用建材など基盤事業の販売・生産体制の効率化と新規ビジネスの拡大に取り組んでいる。a) については、高機能樹脂製品の生産・開発体制増強に向けて熊本イノベーションセンターを建設中であるほか、エネルギー関連市場(太陽電池)向け機能フィルムの生産能力アップなど、今後の事業拡大に向けた体制づくりが進展しており、自社評価は「◎」としている。b) についても、軟質ウレタンにおける生産拠点の移管・統合や住宅用建材におけるスマートファクトリー化・DXなど、基盤事業の収益性・生産性改善に取り組んだほか、新規ビジネス※の拡大に向けても一定の成果を残し、自社評価は「◎」としている。 ※ 一昨年立ち上がった集合住宅向けプレキャストコンクリート製品の拡販や、現場発泡硬質ウレタン厚さ計測システム「アツミエル」の開発及びサービス提供など。 (3) 環境メカトロニクス事業 a) 商品力強化による競争優位性の獲得と海外市場への拡販、b) 社会課題の解決に貢献する商品群の市場投入に取り組んでいる。a) については、ロボットセンシングやIn-Situ計測技術の開発を進めたほか、バイオメディカル事業において撹脱泡装置が海外向けに伸長した。ただ、ロボット用高速3Dビジョンセンサー「クラセンス」や路面検査装置などの販売面の遅れにより、自社評価は「△」としている。一方、b) については、家畜排せつ物をサラサラでクリーンな堆肥に再生できる「FUNTO」が飼料高騰による酪農家の経営環境悪化により苦戦しながらも着実に実績を積み上げたほか、排ガス処理設備やバイオマス等の焼却炉分野が好調に推移した。また、新エネルギー関連では、アンモニアを燃料とする焼却炉への脱硝装置を初受注しており、自社評価は「〇」としている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫) 《HN》 記事一覧 |