Q. インデックス運用とアクティブ運用の二通りがあるということですね。
A.
年金基金などのやりかたを調べてみますと、一応、両方ともやっているわけですよ。インデックス投資もやっているし、部分的に個別銘柄投資もやっている。年金基金といえども、判断できていないのです、どちらがいいのかについては。
ということであれば、私たち個人投資家も、機関投資家と同じように、自分の運用資産の“ある部分”は世界株式インデックスに連動させる一方で、別のところで、銘柄選択による知的なゲームを楽しむという部分があってもいいのではないか。インデックス運用と個別銘柄運用を組み合わせてやる方法もありではないかと思うのです。それが、コア・サテライト戦略です。
コア・サテライト戦略であれば、自分なりの投資をすることができますし、仮に自分の投資がうまくいかなくても残りの部分はマーケットに連動するわけですから、わずか数銘柄の失敗で退場させられることはまず考えられません。逆に、自分の投資がうまくいくようであれば、そちらで頑張ればマーケットに差をつけられるということになります。
簡単に言うと、機関投資家が取り入れている手法を私たち個人投資家もちょっとやってみませんかという提案なのです。
Q. ほかに、本書でとりあげているのは?
A.
あとはですね、国際分散投資につきましても、最近、国同士の連動性が高まってきていますので、国で分けるのではなくて、業種、つまりセクターで分けておかないといけないと思い、グローバル・セクターの話もさせてもらっています。
Q. グローバル・セクター別の投資とはどういうものでしょうか?
A.
例えば、外国株を個別銘柄で持ちたいと考えて、「アメリカから1社、ヨーロッパから1社、日本から1社というような感じで選ぼう」としているとしましょう。このとき、仮に「自分は製薬会社が好きだから」という理由で、「アメリカからはファイザー、ヨーロッパからはグラクソ・スミス・プライン、日本からは武田を選んだ」としますよね。こういう選び方をしたときに、製薬会社にとって何かまずいことが世界的に起これば、どこも株価が下がってしまいます。結局、そういうポートフォリオの組み方をしてしまいますと、分散投資のようでいて、実は分散投資になっていないのです。
ですから、国や地域を分けるだけでなくて、例えば、「アメリカからファイザーを選ぶのであれば、日本からはトヨタを選ぶ、ヨーロッパからはネスレを選ぶ」のように、セクターについても分けていけば、業種が違うので分散投資になるわけです。
最近では、ボーダレスというか、国が違っても駄目なのです。業種が同じであれば、動きが連動してしまうのです。このことは、今の金融株などを見ればわかると思います。
「あくまでもセクターに注意して投資してくださいね」というのがグローバル・セクター別の投資で言いたいことです。
Q. 注意すべき時期がわかるのですね。
A.
そうですね、例えば、短期金利と長期金利の関係がおかしいとか、あるいは金利と不動産の利回りがおかしいとか、経済の状況が変調をきたしている“投資に向いていない時期”がありますので、そういうときは “売る”まではいかなくても投資を控えてはどうかという、投資に向いていない時期を判断するための「炭鉱のカナリア的な6つの指標」についても書かせてもらっています。
さらに、私の得意分野でありますバリュー株のほうがパフォーマンスもいいよという話もさせてもらっています。
この本は、単なるアセット・アロケーションについて解説した本ではなくて、今まで語られなかった新しい視点も入っています。なおかつ、私の経験も入っているということで一味違うよということをわかっていただければなと思います。
Q. アセット・アロケーションという話題を取り上げたのは、『資産運用の強化書』の本文の中でも語られていたように、「そこ(アセット・アロケーション)が利益に直結する部分だから」という理由もあるのでしょうね。
A.
はい。投資というと、みなさん、まずは銘柄選びに頭を悩ますわけです。あの銘柄のほうがいいかな、この銘柄のほうがいいかなという具合に。でも、本書の中でも語っているように、実はそこに時間をいくらかけてもリターンはあまり見込めないのです。なぜなら、個別銘柄選びは資産運用の下流部分に当たるからです。
|