3月中旬を起点とした今回の株価反発の特徴は、いわゆる「売り長銘柄」(信用売り残が信用買い残を大きく上回っている)の上昇率が非常に高くなっていることから、空売りの踏み上げをきっかけとしたものといえます。
通常であれば、空売りをしている投資家がギブアップして買い戻しを行い、信用売り残が減っていくため、反発局面はいったん終了します。しかし今回は、株価反発局面で、売り方はナンピン買いならぬ「ナンピン売り」をしている一方、買い方は利益確定売りなどにより手じまいをしているため、株価上昇にもかかわらず信用売り残がますます増えているという状況になっています。その結果、安値から短期間で株価が2倍、3倍に上昇している銘柄が続出するという、異常事態になっています。
しかし、だからといって安値から何倍にも株価が上昇した銘柄を、「信用売り残が増加しているからまだまだ上がる」と思って買いに走るのは危険が伴います。
売り長銘柄の特徴は、「業績の振るわない銘柄が多い」という点です。だからこそ、空売りが多く入っているのです。
したがって、空売りの買戻しが一巡し、その企業の実態に改めて注目が集まれば、再び下落に転じる可能性は大いに考えられます。そして、短期間に株価が大きく上昇した銘柄は、いったん天井をつけると、下落のスピードも非常に大きなものになりますから注意が必要です。
たとえば、東日カーライフグループ(8291)の最近の株価の動きは非常に参考になるものです。この銘柄も信用売り残が信用買い残を超過する「売り長銘柄」ですが、3月23日に15円の逆日歩が、そして25日には30円の逆日歩がついたことをきっかけに株価は急上昇しました。株価は3月18日の35円から、わずか2週間後の4月2日には230円まで、約7倍に上昇しました。しかしその後は株価下落を続け、4月17日には110円まで下落しています。
作図: マーケットチェッカー
そして驚きなのが、4月2日の株価の動きです。211円の寄り付きで始まり、230円まで上昇したあと、なんと131円まで下落しているのです。高値の230円付近で買った投資家は、その日だけで買値の4割も含み損を抱える結果になってしまいました。
なお、東日カーライフグループは4月17日時点でも「売り長」の状態(貸借倍率0.58倍。倍率1倍より低ければ売り長。)です。たとえ売り長の状態であっても、株価がいったん天井をつけてしまえば、大きく下落するというよい例です。
このように、運悪く天井付近で買ってしまうと、買って数日で買値から20%、30%は簡単に下落してしまうのです。
したがって、いくら空売りの踏み上げによる上昇が期待できるとしても、安値から株価が2倍、3倍にも上昇している銘柄については、一旦の天井を付けた後の押し目を待ってから買うようにしましょう。万が一、押し目らしい押し目を作らずにさらに大きく上昇してしまったら、それは非常にレアなケースであり、仕方ないとあきらめるべきです。
同じような局面はこれからも何度も訪れるでしょう。しかし、毎回毎回、安値から何倍にも上昇した銘柄に飛びついて買っていれば、多くの場合は高値掴みとなり、多額の含み損をかかえることにもなりかねません。チャンスはいくらでもやってくるのですから、株価が何倍にも上昇した銘柄を、上昇途中で無理に買う必要は決してありません。株式投資に焦りは禁物です。