上っ面だけの HOWTO 本ではない!とにかく濃い!濃厚な一冊である。
本書においてはイェール大学の自立・優れた教育環境の創造の為に資金を稼ぐ崇高な目的の為に作られたポートフォリオに対する考えを惜しみなく公開してくれている。
長期投資家にとっては会社の成長性や優位性・そしてマーケットの状況を第一に考えてしまいがちだが、この本では最初にポートフォリオを組む目的、投資哲学から始まり、理詰めで緻密に分析した上での分散投資の重要性について語られます。
各投資商品についても、これほど詳しく教えてくれるのか!と驚くほど詳細なデータで我々の判断を助けてくれる貴重な資料になります。
ただ、大学基金の運用のお話ですので、例えば、基金運用者を雇う時の注意点や、大学基金における運用が失敗し外部から資金提供を受けた場合、大学はどうなってしまうのか?とか個人投資家には直接必要ではない部分もありますが、知っておいても損はないと思います。
本書で語られる内容は、私の投資スタイル(個別株・長期・集中投資)とは若干異なる物ですが、流動性の高い株式は投機家たちによってプレミアがついてしまっている為、流動性の低い株式のビジネスを徹底的に見定め、結婚するつもりで買う!などはバフェット流と共通する考えで興味深かったです。
本文中で何度も語られる、厳格な枠組みと規律・アクティブ運用・理詰めで十分に検討を重ねた上での分散投資についての洞察は、著者の長年の実務から得られた本物の哲学ですので、私のような若干異なるスタイルの方にも、投資スタイルの幅を広げるという意味でも必ずや得るものがあると思います。
本書の中で再三語られるが、簡単な HOWTO で他人の真似をすることには厳格に NO!と告げている。
つまり、強い目的意識を持ち、この本を参考にしつつ、自身でしっかりとした投資哲学と緻密な分析力を身に着ける。
そのために、内容も分量も濃い本書を何度も何度も繰り返し読み続ける力をつける。
今後、本物の投資をしたい投資家にとってはバイブルとなる一冊であることに間違いは無いでしょう。
市場に大きく勝ち続けるスウェンセンの著書です。
スウェンセンの長期的に連続した成功の秘訣は、防御にあるということがわかります。
この積極的な防御のために分散投資と投資方針を貫くことを推奨しています。
個人投資家としては、アクティブ運用を使いこなすことができる力量があるか、ないかという点からスタートします。
アクティブ運用を使いこなすことができる力量がないのであれば、自分のリスク許容度の範囲で先進国に分散された株式に分散投資し、残りを米国国債に投資することで基本的には終わりということのようです。「株式へ重点配分しながら、適切な分散を維持することは強固なポートフォリオを構築する際の基礎である。」と記載されています。つまらないけれど、確かに負けなそうです。
また、スウェンセンはマーケットタイミングを利用することには否定的です。「合理的な投資家は、マーケットタイミングの誘惑に負けてはならない。」と記載されています。この点は、ハワード・マークスなどとは、意見が異なっています。成功する投資は1つではないということがわかります。
スウェンセンは銘柄選択についても否定的です。「総じてすべての市場で資産価格はかなり効率的に形成されており、たやすく利益をあげることができる機会はほとんどない。」と記載されています。銘柄選択で成功している投資家も多くいるので、こちらからも、成功する投資は1つではないということがわかります。
積極的防御になるので、アセットアロケーションや逆張り投資には前向きです。
その他の資産クラスについてもコメントがあります。
個人投資家として、大変参考になる記載が満載で面白かったです。一気に読めました。
スマイル 会社員
個別株 25年
優れた投資パフォーマンスで知られるイェール大学寄贈基金の運用責任者である著者が、その運用について、目標、哲学から具体的なアセットクラスの選択や投資スタンス、アセットアロケーション、運用評価等まで幅広く、豊富な資料とともに詳細に解説した内容となっています。
まず投資目標や投資哲学からはじまり、アセットクラスとしては株式を中心とした選択をしつ、パッシブ運用を中心とした運用で逆張りの投資スタンスもとりながらオルタナティブ資産クラスまで組み入れて投資パフォーマンス向上をめざすスタイルは納得できるもので、小手先ではない骨太な運用というのものを実感できます。
ただ、米国市場を中心とした運用であり、書かれている例について実感をもって理解しにくい隔靴掻痒感があったり、あまりに記述が詳細で個人の運用としては直接意識しなくていいような内容まで含まれているとも感じる部分もありました。
ともあれ、総合的な資産運用のあり方の実例の総合的な解説書として本書は優れた一冊となっており、資産運用を学習するための資料的文献としてもすすめられると思いました。
ふしみん 50代 個人投資家
鳳凰堂のランダム・ウォーカー