続いてSOです。SOは「stock option=ストックオプション」の略称です。
このストックオプションとは会社が取締役や従業員に対して、あらかじめ定められた価額(権利行使価額)で会社の株式を取得することのできる権利を付与し、取締役や従業員は将来、株価が上昇した時点で権利行使を行い、会社の株式を取得し、売却することにより、株価上昇分の報酬が得られるという一種の報酬制度をいいます。
ストックオプションの事例(仮で書いています。)
総会決議 | 対象株数(株) | 行使価格(円) | 行使期間 |
2021/3/12 | 170,100 | 134 | (自)2021-07-01〜(至)2025-06-30 |
総会決議とはストックオプションが付与された日、対象株数は付与された株数です。
この場合、行使期間は2021年7月1日以降なので、上場時が2021年7月を過ぎていた場合は、このストック・オプションの権利を持つものは権利行使できますので、上場時のリスクになります。
VCもSOもIPOの公開株数には含まれず、上場後にすぐに売却しても良いケースがありますので、VCとSOが多い銘柄は注意が必要です。
最後に、初値の出来高です。証券会社から上場前のIPO株を獲得している方々の売却に注意する必要があります。
例えば、公募売り出し数が1,000,000株のIPOがあった場合、この1,000,000株は証券会社を通じて投資家へ配分されていますので、上場時は配分された投資家の状況を確認します。仮に初値形成時の出来高が400,000株だった場合は、全体の4割しか売買されていませんので、残りの6割は初値形成後に売りで出てくる可能性が考えられます。
下記は2021年のIPOから一部抜粋しました。(カッコは公募売り出し数の割合)
テスホールディングス
公募売り出し数 9,800,000株
初値形成時の出来高 3,842,900株(39.2%)ネオマーケティング
公募売り出し数 460,000株
初値形成時の出来高 452,200株(98.3%)紀文食品
公募売り出し数 4,144,000株
初値形成時の出来高 2,394,100株(57.7%)
このように銘柄ごとでかなりバラつきがあります。
もし、大株主がロックアップ付いていて、公募売り出し組だけの売却が出ることが考えられるケースは、初値形成時の出来高が全体のどれくらい出ているのか注目することをお勧めします。
続いて、セカンダリーの手法をお伝えします。
IPO銘柄は上場当日の「初値」、つまり投資家の需給関係によって、市場で本当の価格が決まります。
ただし、中には人気化によって買い注文が殺到し過ぎたために、初値が決まらない場合があります。
そのような時に、初値形成を早める目的で課される制限のことを「即金規制」といいます。
即金規制は「新規上場銘柄の売買に関する規制措置」のことをいいます。IPO株は上場当日に、売り注文よりも買い注文の方が圧倒的に多ければ「特別買い気配」となり、気配値を切り上げていき、売株数と買株数が同数となったところで「初値」が決まります。
買い株数と売り株数が一致するまで初値は決まらないのですが、上場初日の株価は最大でも公募価格の2.3倍までしか切り上げることができないという決まりがあります。そして、特別気配が2.3倍まで達した場合は初値が決まらなければ、二日目に即金規制が適用されて再開されます。
つまり、時間軸としては以下のようになります。
上場初日 初値決まらず
上場二日目 即金規制で取引に制限
上場三日目 通常ルールに戻る
なお、二日目に初値がつけば三日目からは通常取引に戻りますが、二日目も初値がつかなかった場合は三日目も即金規制が適用されます。
即金規制がかかった銘柄には、以下の3つの規制が課せられます。
・取引にかかる現金が即日徴収されるようになる(受け渡しの資金が使えない) ・注文方法が指値注文だけになる。 ・信用取引が行えない。 |
この規制によって、株価には以下のような影響が起こる傾向があります。
・買い手が減少してしまう。 ・本来の価格より下がるので規制解除後の買い気配が高まる。 |
上述のとおり、即金規制は二日目の買い注文には影響しますが、二日目に初値が決まった場合は、翌日から発注方法も含めて通常取引に戻りますので、買い手が増えていきます。
また、二日目のどのタイミングで初値が決まったとしても、その日は終日、即金規制のままで翌日の三日目から通常取引に戻ります。二日目は終日、現金取引となるため、その時点では、まだ積極的に買われないことが多いです。しかし、翌日には通常取引に戻りますので、それを意識した買いが二日目の後半から入っていく場合があります。
つまり、二日目に下図のような動きをした時が狙い目ということになります。
私は、このようなパターンを利用して、これまでかなりの数、投資をしました。
下記はシキノハイテック(6614)の事例です。
シキノハイテック(6614)
1200円 400株 1425円売却 +90,000円
1100円 800株 1199円売却 +79,200円
下図は同社の上場直後のチャートです。
シキノハイテックは公募価格390円だったので、上場日の気配上限は897円でした。上場日は初値が決まらなかったので翌日は気配上限が2,063円になりました。二日目は初値が1,221円で決まりましたが、一時1,430円まで値上がりしています。後場は一時急落しましたが、大引けまでにはある程度戻しています。そして、三日目以降は上昇していきました。
即金規制は取引に関する規制に注目した投資手法です。この手法を長年実践していますが株価の傾向は変わっていませんので、今後も注目できる方法であると思います。
次のページは、企業業績に注目した投資法です。
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証券会社在籍時に営業、ディーラー、インターネット株式投資部門の立ち上げを行い、 証券会社でのIPO業務や企業分析の経験を活かし、2008年に投資手法を確立。 その後は毎年、投資を実践し、自身でも成果をあげ、これまで述べ50,000人の投資家に自身の投資手法を伝授。 現在は合同会社Willowの代表として活動中。 著書に『安定的に利益を出せる 先回りイベント株投資』、『いつでも、何度でも稼げる! IPOセカンダリー株投資』(すばる舎)。 証券外務員資格一種保有。
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