銘柄選びの基準に、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を用いる方も
多いでしょう。PERは利益と株価との関係から、PBRは純資産と株価の関係から、
それぞれ株価が割安か割高かを判定する指標です。
ところで、PERやPBRが低い銘柄には、東証2部、大証2部上場のいわゆる「2
部銘柄」や、ジャスダック上場の銘柄が多いことが分かります。
この事実だけをみると、2部上場の銘柄や、ジャスダック上場の銘柄は「割安
株の宝庫」に感じてしまいがちです。しかし、そうした銘柄が割安に放置され
ているのには理由があるのです。重要な理由の1つとして、「売買高が少ない」
ことがあげられます。
上場株式に投資することのメリットの1つは、「流動性の高さ」にあります。
換金したくなったら、株式市場で売却すれば、4営業日後には現金にすること
ができます。
ところが、上場している株式でも、売買高が少なく、流動性が低い銘柄も数多
くあります。
例えば、新日鉄など流動性の高い銘柄であれば、300円の株価がついているとき
に成行で売り注文を出せば、たいていは300円か299円といった値段で売ること
ができます。
しかし、売買高が少なく、流動性の低い銘柄のケースでは、300円の株価がつ
いていたとしても、買い注文自体が少ないため、270円とか250円、といった
値段まで売値を下げざるを得ない、ということがよくあります。
さらに流動性の低い銘柄になると、買い注文や売り注文自体が全くない場合も
あります。この状態で、持っている株を売りたいと思っても、買い注文が1件
もないのですから売却して換金することすらできません。
つまり、2部銘柄やジャスダック銘柄が割安に放置されているのは、現在の株
価水準で売買ができない、そして場合によっては売りたくても売れない、とい
う、「流動性リスク」を反映した状態で株価が形成されているのがその大きな
理由なのです。
こうした流動性の低い銘柄は、業績や財務状況だけをみたら確かに株価が割安
ですから、資金に余裕のある投資家なら、株価が上昇するまで、気長に持ち続
けるという方法もよいでしょう。
しかし、一般の投資家であれば、万が一のとき、緊急に換金しなければならな
くなった場合のことを考慮して、流動性の低い銘柄ばかりに投資するのは控え
るべきでしょう。判断基準の例としては、1日あたり1単元の100倍以下の売
買高(つまり、1000株単位の銘柄であれば、1日当たりの売買高が平均して10
万株以下)のものは流動性リスクに十分に注意して投資するようにすることを
お奨めします。