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本書はバリュー投資の教科書といわれる『賢明なる投資家』にジェンソン・ツヴイク(金融ジャーナリスト)が、現代版の注釈を付け加えた意欲作です。アップデートな注釈がついたことで、少々難しめの『賢明なる投資家』が初心者にも理解しやすくなっています。
『賢明なる投資家』はグレアムの優しさでできていると思います。そもそも、グレアムは大恐慌でほとんどを失った投資家の一人です。この苦い経験と教訓を元に投資の世界で成功したのですから、「賢明なる投資家」には一度失敗した人の「こうなったんだから、あなたたちも気をつけなさい」風の優しさが感じられるのです。
これは私的な意見ですが、『賢明なる投資家』は株式投資の初心者に勧める最も優れたテキストだと考えています。今回の注釈付きの新版になったことで、多くの人に古典的名著の扉が開いたといえるでしょう。
ちなみに現代版の注釈といっても、単なる注意書きではなく2000年初期のアメリカのITバブルでの市場の熱狂に燻された、数々の愚かしい行為を扱った「おもしろレポート」といえるボリュームを誇っています。
本書は『賢明なる投資家』の各章ごとの注釈と、ツヴイクが付けた(注)で成り立っており、それらは愛着を込めて「おもしろレポート」といいたくなるくらい読みやすく、親しみやすく、面白く、ウイットに富んでいます。彼のユーモアセンスにおそらく2〜3回は爆笑するでしょう。少なくとも、突然出てくるジョークに一度はコーヒーを噴き出すかと。さらりと爆笑モノのコメントが差し込まれているのです。
この注釈のなかでITバブル時に繰り返された馬鹿げた投機行為を、数十年も前に公開されている『グレアムの投資戦略』と比較し、グレアムのいわんとすることをこれからどのように応用していけばいいかを理解できる内容となっています。
さて、「旧版 賢明なる投資家」と「新版 賢明なる投資家」の違いが明らかになったところで本書『新 賢明なる投資家 (上)』の内容に触れたいと思います。
『新 賢明なる投資家 (上)』は旧版『賢明なる投資家』の1章から10章までを扱っています。
株式投資の初心者の方は、グレアムの偉大な弟子ウォーレン・バフェットも主張するように「第8章 投資家と株式相場の変動」から読み進めればいいでしょう。かの有名なミスターマーケットに出会えるはずです。この有名人をツヴイクは「そううつ病のミスター」と形容していますが、これほど適切な表現もないでしょう。 ミスターマーケットを知ることは株式投資において非常に重要な意味を持っています。ミスターとの付き合い方をここでしっかりマスターしておくことが大怪我を防ぐ第一歩です。
株式投資のベテランや、これまでに『賢明なる投資家』を読んだ人にも、「賢明な投資」という意味で、本書は債券投資・分散投資を考えるいい機会になるでしょう。ツバイクの注釈に日本のバブル経済が触れられています。そこで「縄張り」という語句を用いて、単一通貨での投資がいかに投資機会を失うかということ発見しただけでも、個人的に勉強になりました。熱狂する市場の中での賢明な身の処し方が提示されていると思います。
また、ツバイクの注釈には、投資の参考・勉強になるWEBサイトがたくさん紹介されてす。そのひとつ、アメリカ財務省のサイトに行ってみましたが、「あ、ドルさえあれば債券って気軽に買えるのね。」とドルが身近になりました。超低金利のため、債券投資にはあまり熱意が持てませんでしたが、本書で少しは扉が開いた感じがします。
さて、最後に『賢明なる投資家』の世間一般での位置を紹介したいと思います。第10章の(注)で以下の文章に触れました。ここに株式投資の大きなヒントがあるのではないでしょうか?要するに、無視さえしなければいいのです。
『グレアムも良く話していたが、自身の著作はどんな投資本よりも多くの人に読まれている――無視されてもいる』
(くらげ 20代 会社経営 「初心者投資」管理人)
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