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億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術

メアリー・バフェット, デビッド・クラーク, 井手正介, 中熊靖和 日本経済新聞社

本書「バフェットの銘柄選択術」は株式投資で財を成し遂げたウォーレン・バフェットの銘柄選択の方法を、株式投資の初心者を明確に対象を絞って、手取り足取り解説した1冊です。

多くの初心者は「かぶしきにゅうもん」と銘打たれた書籍を読んでも「はて、結局、何をしたらいいのかしらん?」と、読む前と変わらない自分の姿を発見してきたのではないでしょうか?

本書は株式投資の初心者に対象を絞っているので、文章の平易さは群を抜いています。中学生でも最後まで読みきってしまうでしょう。銘柄分析や企業分析、経営分析にはありがちな数式の出現を最小限に抑えているので、なんとか最後まで読破できるのです。

数式といっても、初心者風に味付けしているのが助かります。たとえば、『10年間の年平均収益率を挙げてみましょう』という記述があるとします。従来の書籍では単にそれを求めるための数式が並べられて終わっていたでしょう。ほとんどの初心者はそこで呆然として終わっていました。

しかし、本書では『エクセルで計算するならセルに「=(100/11.80)^(1/10)−1 」を入力してリターンキーを押そう』と説明するので、何をしたらいいのかはっきりしているんです。そして、この計算で算出した数値を利用して銘柄の分析をしていきましょう、と話が展開していきます。初心者にとっては、このような優秀な講師が傍にいるかのような記述が大変ありがたいのですよ。

次の特徴は「反復」です。読み進めていくうちに『では、10年間の〇〇〇の推移を書き出してみましょう』といった語句に何度も遭遇するはずです。物書きにとって同じことを何度も書くことはタブーのはず。それでも、敢えて投資にあたって重要な事項を繰り返すことで、バフェット投資のエッセンスをマスターできる構成となっているのです。

本書は、銘柄分析に悩む投資家にとって大げさにいえば「砂漠のオアシス」です。実際の銘柄分析の一端がはっきりする1冊です。砂を噛むような分析本は後にとっておいて、まずは、本書で基礎を築くことをお勧めします。

とはいえ、ウォーレン・バフェットの投資法がそっくりそのまま、日本の株式市場に当てはまるとはいえないのです。一時、バフェットがある日本企業を購入しようとしているとのうわさが流れました。結局、バフェットによる買いはなかったのですが、中国のある企業が買われました。これはある意味、日本にバフェット銘柄がないことバフェットが認めたのではないかということです。(バークシャーの時価総額に対するインパクトがないと判断されたのかもしれませんが。) 個人的にはそのあたりの点に留意して本書を使い、自分なりの方法・技法を磨いていけばいいかと思います。

そのほか、本書のおまけ効果として株式用語がスムーズに理解できる事が挙げられます。各章での演習・練習問題、巻末にあるケーススタディ・ワークシートを見て取り組んでいくうちに、自然とROE、EPS、PERなどなどの証券投資用語に慣れ親しんでしまうでしょう。「用語」とは使えない限り憶えないのです。

今回、書評を書くにあたって再読してみましたが、ごく普通の、ごく当然な内容だなぁ、と思いました。「ハテ、こんな感覚はどこかで味わったことがある・・・。」 そう、押入れにしまってあった学生時代の教科書を、ひょっこり見つけた感じなんです。「当時はこんな簡単なことがわからなかったのだなぁ〜。」と。

本書「バフェットの銘柄選択術」は、こんな感覚を持たせる意味でも、わたしにとって大切な株式投資の教科書だったのだなぁとしみじみ思いました。株式投資がいまいちピンとこない人、それはもしかしたら良い教科書に当たっていないのが原因かもしれませんよ。

(くらげ 20代 会社経営 「初心者投資」管理人)

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